旅と毎日のうろうろ。-3拠点暮らし雑記帳-

東京京都浜松の多拠点生活中・25歳差婚の兼業主婦/セラピスト手島渚として5冊の本を出しています/新刊来年春完成予定/このブログでは旅と、暮らしについてつづります

今週のお題「読書の秋」に読みたい本

今週のお題「読書の秋」

 

秋だからというわけでもなく、わたしは読書が好きですが、ここ何年かは仕事にまつわる本ばかり読んでいました。

 

本当はいちばん好きな本のジャンルは小説です。

田舎の暗い子どもだったわたしの心を解放し、遠くへ飛ばせてくれたのは、人の想像力が生み出した架空の「おはなし」の数々でした。

 

大人になって、大好きな小説を読む余裕なく過ごしていましたが、浜松で暮らすようになってから、小説を読むときの没入感やノスタルジックな気持ちが回顧して、一冊読み始めると、堰を切ったように「読みたい」気持ちが溢れているこの頃です。

 

旅に出るときになにか本を持っていくことも多いです。

海外に行く時には、読まずに終わり、筋トレに一役買うだけのお荷物かも…と思っても、かならずなにか一冊は本を持って出かけてしまいます。

フライトのお守りのようなものですね。笑

 

最近読んだ魅惑的な本について語り出す前に、面白いものを3冊紹介します。

 

1つはノーマン・ドイジの「脳はいかに治癒をもたらすか」セラピストさんにおすすめの本です。

 

脳はいかに治癒をもたらすか 神経可塑性研究の最前線

脳はいかに治癒をもたらすか 神経可塑性研究の最前線

 

 

 

もう1つはエムラン・メイヤーの「腸と脳」

これもセラピストさんにおすすめ。

 

腸と脳──体内の会話はいかにあなたの気分や選択や健康を左右するか
 

 

 

そしてもう1冊は「ジプシー」

 「ノマド」に興味のある方におすすめの本

ジプシー (1967年) (ハヤカワ・ノンフィクション)

ジプシー (1967年) (ハヤカワ・ノンフィクション)

 

 

ノマディック、という生き方をある意味で学ばせてくれた1冊で、結婚前に夫が「おもしろいから」と教えてくれた本です。

もう中古でしか買えないかも…

ジプシーの人たちは社会的にはいろんな差別にあったりしていると思いますが、ジプシー同士のこころのつながり、生き方など、お手本にしたいこともたくさんあるなあーと思うのです。

 

安定志向の強い現代ですが、もしかしたら地球やわたしたちの意識の自由のためにも、もっと人は、持ち物をシンプルにして、さまよい、うろつき、移動したほうがいいのかも、と、そんなふうにも思います。

 

 

最近読んだ小説でとても面白いと思ったのは、パトリック・ジュースキントの「香水 ある人殺しの物語」です。

 

香水―ある人殺しの物語 (文春文庫)

香水―ある人殺しの物語 (文春文庫)

 

 

 

映画にもなっているので、観たことがある方もいるかもしれません。

過激で、残酷な物語ですが、強烈に惹かれるのは、その香りの描写ゆえでしょうか。

18世紀のフランスにひしめいていた、あらゆる「匂い」が文章から匂ってくるような、目の前にパリの街や人物がリアルに現れてくるような、没入感があります。

 

香りが好きで、勉強している人には、香りを作り出すためのさまざまな基材、手法、ブレンドテクニックの話や、ヨーロッパを席巻し、支配していたメディアとしての「香水」の話なども、楽しめるでしょう。

 

美しい植物の香りの表現もすばらしいのですが、この小説の主題は「人間の匂い」だろうと思います。

 

若い女性特有の「いい匂い」は10代後半がピーク…維持する方法は?(読売新聞(ヨミドクター)) - Yahoo!ニュース

 

 

そういえば、この前yahooニュースでこんな記事がシェアされていました。

まさにこの話です。

この本が書かれた時代には、きっと科学的にはわかっていなかったことだと思うのですが、ジュースキントはこのことを知っていたとしか思えません。いや、この時代の人たちはみんな知っていたのでしょうか?

 

この本はもともと夫の持ち物ですが、我が家ではこのボロボロさ加減…

 f:id:wholetreatdays:20181129112349j:image

 

1985年に出版、とありますから、今から33年前。世界中で1500万部を売り上げた大ベストセラーです。

  

この本の主人公、グルヌイユが作り出した香りで人々を魅了したのと同じように、ジュースキントの描写に多くの人が魅了され、残酷だと知りながら、のめり込んでいったのでしょう。

 

この主人公は、特別な鼻だけではなく、人ならぬ能力を持っているという設定で、出会う人の運命を翻弄していきます。

悪魔か天使か、わかりません。

きっと、悪魔だという人が多いと思いますが、わたしは別の角度から見ると、こういう人物こそが天使と言われるのではないだろうか、そんな気もするのです。

 

主人公のグルヌイユはある意味では単なる狂人ではなく、神です。

この物語のなかで唯一無垢で純粋な存在、そして不死のアイコンとして描かれていますから、ただ残酷で過激なだけではなく、人間の生々しい欲や闇を解放して浄化していく、そんな感じもします。

 

本を読むこと、そして小説を読むことの楽しみは、なにか「手法」や「正しさ」を知るということではなく、脳のなかをぐるぐると混ぜて料理をするように、イメージやインスピレーションを煮出していくような気持ちです。

 

「香水 ある人殺しの物語」は、実際の本のページ数を超えた広がりと膨らみを持ち、「どこか遠くに旅させる」そんな一冊でした。

 

「なにかのために読む本」にもそれなりの面白さがありますが、「出会ってしまったすごい本」そんな一冊に巡りあうとき、それはまるで魔法の書のように、人生を変える鍵になることもあると思います。

そういう本のために時間を費やしたいです。

 

少し夜が長い秋や、旅のために、次の小説との出会いを楽しみにしようと思います。

 

 nagisa.