渋滞でも京都の紅葉を見に行ってしまう理由を知った日
「昼なのに光っている星。それはなんでしょう?」
陽光にきらめく赤や黄色を見ていると、そんな「なぞなぞ」を思いつきました。
京都の紅葉はやはり特別です。
京都に家があって、時間の自由がきく、ノマディックライフのアドバンテージを最大限に活かそうと、平日の朝からレンタカーで紅葉を見に行きました。
祇園に住んでいた20年ほど前のこと、今ほどはインバウンドが盛んではなかったにもかかわらず、
「祇園から四条烏丸に車で行くと1時間かかる」(歩いて12〜3分の距離)
と言われた、恐るべき京都の紅葉ハイシーズン。
この時期の休日に、バスや車で移動するのは、絶対にダメ。
せっかく京都に住んでいるのに、「紅葉を見にでかける」のは「人混みを見にでかける」を意味していると思いこんでいたあの頃、この時期は、外出も控えていたほどです。
京都の街中は、端から端まで徒歩や自転車で行こうと思えば行けるくらいコンパクト。
車で移動しなくちゃいけない場合も、紅葉シーズンはなるべくこじんまりと活動していました。
紅葉がきれいなお寺はわりと街の端っこのほうにあるので、車での移動が必要になることも多いです。
電車はスーッと縦、ちょっぴり横に走っているだけなので、街中の移動にはあまり役に立ちません。
Googleで調べると、最寄りの電車(地下鉄)の駅から徒歩20分、とか、駅からさらにバス、とか、とにかく電車は不便です。
運動が好きな方なら自転車が意外に便利かもしれませんね!
レンタサイクルも最近よく見かけます。
市電が残っていたらよかったのにねぇ!とよく
夫がよく言います。
アムスやバーゼルのように、近代的で便利なトラムとしてかなり活躍したことでしょうね。
というわけで…紅葉の中をドライブしたい、という夫のリクエストにより、千本丸太町付近から紅葉見物に出発。
混雑必至の駅前や左京区は通らず、紅葉の美しさで有名な高雄のほうへ行くことにしました。
このエリアには、神護寺、西明寺、高山寺と、3つの古刹があります。
たまに仕事で京北町に行くときに通りますが、いつもふわーっとスルーしていました。
平日ニコニコレンタカー保険込み6000円、千本丸太町のあたりを出発してから20分ほど北のほうへ走ります。
昔、一人でバスで行ったときはとても遠い気がしましたが、今回はとても近く感じました。
道はそれほど混んではいませんでした。
まず神護寺に行きたかったのですが、駐車場がイマイチわからず…
とりあえず高山寺の近くの市営駐車場へ。
どの駐車場も1000円/1日。
普段からこんな値段だったかな?
泣く子も黙る京都のハイシーズン、全体的に「稼ぎどきやー」っていうムードが漂っているような気が…と、つい、疑ってしまいます。
今年は暖冬で、街中に比べれば早いはずの高雄も、まだかなり紅葉を残していました。
わたしは子どものころ、日本舞踊を習っていたのですが、じつは着物や小物や舞台装置によく使われる「紅葉」が、ファンシーすぎて、どうも好きになれませんでした。
紅葉のモチーフや紅葉柄って、なぜか黄緑と黄色と赤とオレンジが複雑に混ざっているものが多い。
すごく派手。
紅葉って、赤と緑の組み合わせか、
真っ赤か、黄色やろ!と思っていました。
そんなに賑やかにしなくても…秋なんだしもうちょっと落ち着いた色合いの方が素敵なのでは、と思っていました。
生意気な子ども…w
それが長じてなのか、関係ないのかはわかりませんが、紅葉に興味あるかと言われたらそれほどでもない、というのが正直なところで、混み合うお寺で人をおしのけ、渋滞にはまってまで「見たい」と、思わず生きてきました。
ところが、今回たぶん初めて「紅葉見物」に行き、自分のその感覚や経験が間違っていたことに気づいたのでした。
この日、高山寺に入ってすぐ見た紅葉の色合いは、おみやげ屋さんで売られている「紅葉グッズ」の「紅葉柄」とそっくりそのまま。
一本の木から出た葉っぱの色が、赤だけでも、黄色だけでもなく、緑からだんだんグラデーションになっていく途中の、微妙な瞬間をとどめていました。
あ、あの紅葉柄って、想像でも誇張でもなく、本当にこんな色をうつしとっていたのだ!と思いました。
ビニールや、縮緬をカラフルに彩り、光を当てて、このキラキラを表現しようとしていたんでしょう。
わー、日本人ってすごいなあーっと、なぜか深く感心してしまいました。
そして、自分は「ベストタイミングの紅葉」を39歳のいままできちんと見たことがなかったのだなあーと。
真っ赤っか、や、真っ黄色もたしかに美しい紅葉の姿には違いありませんが、「うつろいゆく」そのタイミングで見るというのはまた格別です。
昔の人にとってはこの紅葉を見ることが、映画やお芝居のように、こころときめく時間だったのだと思います。
あと、もみじといってもいろんな種類があるんですねー。
この葉っぱは小さくてとんがっている、こっちは大きくて赤と緑がまだらに紅葉する、黄色っぽくてふっくらしている…など。
そのいろんな種類のもみじが絶妙に配置され、
この季節だけの色合いのハーモニーを見せてくれるようです。
さらに京都のお寺では、紅葉も含めた庭全体が四季を通してデザインされているから、またその様子が面白いと思います。
「自然そのまま」じゃ、ないんですね。
その庭を作った人のセンスが表現されています。
その「紅葉のデザイン」については「後藤繁雄と渚のアールドヴィーヴル」に書く予定ですので、お楽しみに!
さて、話を紅葉見物に戻します…。
まず、高雄の奥にある栂尾の高山寺へ。
明恵上人ゆかりのお寺で、わたしのような、白洲正子ファンは外せないでしょう。
意気揚々と向かいましたが、京都は台風21号の被害が大きく、高山寺は倒木があって奥の金堂まで入れなかったので、石水院の拝観だけしました。
わたしにそっくりの像が!
髪型も同じ!
鎌倉時代作の仔犬…
鳥獣戯画の複製も見ました。
明恵上人の図。
合掌。
お寺の中の紅葉も美しかったです。
お堂は撮影禁止だったので…
虎!
様子を見ていたおばさまたちに、笑われながら撮りました。
西明寺の裏門から出て、 少し歩くと、神護寺へ登る長い階段があり、ひたすら登ります。
登った甲斐のある眺め!
「かわらけ投げ」で有名な神護寺、とてもきれいです。
でも、神護寺も参道に倒木がたくさん…
手すりなどが崩れているところもありました。
奥の院の向こう側に、こんな像があります。
山茶花が、美しい。
お昼ご飯は、観光地ならではの味のカレーやうどんを食べて、ゆっくり高雄を満喫。
本当は大好きな京北や美山にも行きたかったのですが、渋滞も心配だし欲を出さずに帰ろう、ということになって早めに駐車場を出たのですが…
このあと恐怖のドライブが待っていました。笑
離合が厳しい細い山道(京見峠に続く道)に出てしまったのです…素直に来た道から帰ったらよかったのですけど、
ナビが一番目に示したほう、つまり、来た道と反対に行けば、ぐるりと「一周できる」と思ったんですね。
最初はフフフーンとご機嫌に走っていましたが、途中から、「あ、これはまずい」と気づきました。
Sさんの車に乗せてもらって京北へ行ったときに迷いこんだ細くて危ない道…
あと、かなりはるか昔にも夜中に通って「ひえー」っと怯えたあの道(人の運転)…
まさか自分の運転で通ることになるとは。
夫は運転できませんし、わたしも運転に自信があるほうではありません。
ただ、屋久島で毎年似たような道をドライブしているので、狭い道は高速道路よりは好きです。
でもここは関西ですからねーーーー。
屋久島とは人間が違う…怖い。←偏見
案の定、後続の車から追い立てられることになり…心臓ばくばくでしたが、
とりあえず「お先にどうぞ〜」っと避けながら、無事に恐怖のドライブを終えることができました。
途中の眺めは素晴らしかったようなんですが…
余裕ゼロ。
「あ〜やっと街に出た!」と思ったら、そこは鷹ヶ峰、光悦寺の真ん前でした。
恐怖のドライブで疲れていたわたしは、 門の前を通るとき「あー、光悦寺だね」と、さらっと言いながら行き過ぎようとしたら、
夫の目がキラリと輝き…「まだ時間あるよね?」
「あーでも…駐車場が…」
この時期はタクシーしか停められないそう。
何度か光悦寺の前を、行ったり来たりして、少し離れた場所に、おじさんが座ってお金を取っている駐車場を発見しました。
やっぱり1000円/1日です。 1時間もいないけどね…と思いながら光悦寺へ。
「入り口は撮影禁止です〜」と言われます。
拝観料を払う場所から撮影可能です。笑
写真撮影も有料なんですね〜。
このアプローチがあまりにも見事でインスタ映えするせいか、無料エリアでは撮影不可、ということのようです。
人がたくさん来すぎてしまうからかもしれませんね。
そういえば西明寺も、入り口の指月橋の上(無料エリア)では若者がたくさん写真を撮っていたのに、門の中に入ると先輩ばかりでした。
観光の目的が、多様になっているのかな。
本阿弥光悦さんのお墓もありました。
光悦垣。
光悦寺の庭は、「デザイン」が素晴らしかったです!
詳しくは、「アールドヴィーヴル」で…。
もし京都に紅葉の時期にお出かけになるようでしたら、光悦寺はとてもいいと思います。ぜひ足を運んでみてください。
百聞は一見にしかず。
きっと平安のむかしには、今のテレビより影響力を持っていたのでしょう。
わたしが「派手」と思っていた色合いは、周囲の落ち着いた雰囲気と陽光で中和され、爽やかな透明感とともに、人を魅了します。
京都の紅葉が世界中の人に愛されている理由がよくわかりました。
写真/すべて後藤繁雄(iPhone置き忘れ事件のあとのため…)
nagisa.